第7回報告 オキノタユウの繁殖状況

第113回(2013年12月期)鳥島オキノタユウ調査報告
鳥島集団の繁殖つがい数は全体で71組も増えて合計609組に、
北西斜面の新コロニーでは148組が産卵

■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学理学部)

2013年11月22日から12月15日まで、伊豆諸島の鳥島でオキノタユウ(=アホウドリ)の産卵状況を調査しました。これはぼくにとって第113回調査となりました。その結果を下表にまとめました。

【表】2013年12月の産卵状況。繁殖つがい数とカウント数を示す。
 
従来コロニー
新コロニー
鳥島全体
燕崎斜面
燕崎崖上
北西斜面
繁殖つがい数(組)
450
11
148
609
昨年比
+38
+7
+26
+71
増減率
+9.2%
+175%
+21.3%
+13.2%

カウント数(羽)平均

686.4
25.3
267.4
979.7
昨年比
+20.6
+3.9
+32.6
+54.8
増減率
+3.1%
+18.2%
+13.9%
+5.9%

鳥島全体で、繁殖つがい数は609組で、昨シーズンより71組、13%の増加でした。燕崎斜面の従来コロニー(写真1)では450組で、昨シーズンから38組、9%の増加で、デコイと音声装置を利用して形成した北西斜面の新コロニー(写真2)では148組で、昨シーズンより26組、21%も増加しました。

▲写真1. 燕崎斜面の従来コロニー:手前は2010年2月の泥流跡。2013年7月にステンレスの網籠を設置して、チガヤを移植して地面を安定させた。

▲写真2. 北西斜面の新コロニー:平坦な場所にあり、泥流の恐れはない。周囲の草や土を引き込んで、上部な巣が作られている。2004年秋に4組が産卵して、この新コロニーが確立し、それから9年間で148組に急増した。従来コロニーから巣立った若い鳥が移入しているためで、黒っぽい色をした若鳥の占める割合が高い。

 

また、燕崎崖上の平坦地に2004年産卵期から自然に形成された新コロニーでは、昨シーズンは台風の影響を受けてわずか4組でしたが、今シーズンは11組に増えました。  鳥島全島でカウントした個体数の平均値は約980羽で、昨シーズンより55羽増え、増加率は6%でした。それぞれの区域でカウントした平均個体数は、燕崎斜面で686羽(昨年比+21羽、+3%)、北西斜面267羽(+33羽、+14%)、燕崎崖上では25羽(+4羽、+18%)でした。

繁殖つがい数の増加に較べて、カウント数の増加が少なかった原因は、3年前の巣立ちひな数がその前年より少なかったことで、今シーズン、若鳥に成長して帰還した個体が少なかったためです。来シーズン以降は順調に増加すると期待されます。

繁殖状況の評価

鳥島全体での繁殖つがい数は、予測した590組よりはるかに多い、609組でした。昨シーズンは、交尾期と産卵期直前に相次いで2つの台風が鳥島に接近し、鳥たちの繁殖活動に影響を与えたと推測されました。今シーズンは、昨シーズンに繁殖を抑制されたつがいが加わり、繁殖つがい数が急増したと推測されます。

今シーズン、鳥島全体でのカウント数は9日間の平均980羽で、最小889羽、最大1,027羽でした。そして、調査した9日間のうち4日間も1,000羽を超えました。鳥島ではもう、ふつうに1,000羽を観察できるようになりました。

今後の予想

もし順調に行けば、鳥島全体での繁殖成功率は約70%で(最近5年間の平均値)、2014年5月に約425羽のひなが巣立つと期待されます。そして、鳥島集団の総個体数は約3560羽になるでしょう。さらに、つぎの2014-15年繁殖期には650〜660組のつがいが産卵し、460羽前後のひなが巣立つと予想されます。

ぼくは2014年3月で東邦大学理学部を定年退職しますが、それ以降もできるかぎり長く、鳥島集団のモニタリング調査を継続したいと思っています。

 

▲若鳥の求愛ダンス

長谷川博
OWS会長
東邦大学名誉教授
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