第6回報告 アホウドリ繁殖状況
379羽のひなが巣立ち、鳥島集団の総個体数は推定で約3,220羽に。 鳥島のアホウドリ集団は順調に個体数を回復
■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学理学部)
2013年4月5日から5月4日までの1ヶ月間、伊豆諸島鳥島に滞在してアホウドリ(=オキノタユウ)の繁殖状況の調査を行ないました。その結果の概要を報告します。
1. 2012-13年繁殖期の巣立ちひな数と繁殖成功率
2012年11月下旬から12月初旬に産卵数を調査し(第5回報告を参照)、今回ひなに足環標識を装着して、巣立ちひな数を確定しました(下表)。
【表】2012-13年繁殖期の産卵数、巣立ちひな数、繁殖成功率| 区域 | 産卵数 | ひな数 | 昨年比 | 繁殖 成功率 | 昨年比 | |
| 従来コロニー | 燕崎斜面 | 412 | 296 | +21 | 71.8% | +3.6 | 
| 新コロニー | 燕崎崖上 | 4 | 3 | −3 | 75.0% | −10.7 | 
| 北西斜面 | 122 | 80 | +8 | 65.6% | −5.0 | |
| 鳥島全体 | 538 | 379 | +26 | 70.4% | +1.5 | |
燕崎斜面の従来コロニーでは、296羽のひなが巣立ち、繁殖成功率は71.8%でした。北西斜面の新コロニーでは、巣立ちひな数は80羽で、繁殖成功率は65.6%でした。これまで5年間、繁殖成功率は 70%台に維持されてきましたが、今シーズンは新コロニーが確立した2004年以降最低でした。この原因は今後の継続調査によって明らかになるでしょう。
鳥島全体では、379羽のひなが巣立ち、繁殖成功率は70.4%でした。巣立ちひな数は近年最高を記録しました。
 ▲従来コロニーのひな(2013年4月27日)
▲従来コロニーのひな(2013年4月27日)
 ▲新コロニーの巣立ち間近のひな(2013年4月24日)
▲新コロニーの巣立ち間近のひな(2013年4月24日)
これら379羽の幼鳥に加えて、1〜6歳の若鳥が推定で1,523羽、7歳以上の成鳥が1,318羽、それらを合わせた繁殖期直後の鳥島集団の総個体数は推定で約3,220羽となりました。昨年より約220羽の増加です。
 
2. 来シーズン以降の予測
アホウドリの集団生物学的資料と単純な集団モデルから、来シーズンには約580組のつがいが産卵すると予測されます。おそらく、燕崎斜面の従来コロニーで425組、燕崎崖上の新コロニーで6〜7組、北西斜面の新コロニーで約150組が産卵するでしょう。そして、繁殖成功率が最近5年間の平均(=70.0%)程度に維持されるとすると、2014年5月には406羽のひなが巣立つと期待されます。そして、集団の総個体数はおよそ3,475羽になると予想されます。
また、今年巣立った幼鳥が繁殖集団に加わる2019-20年繁殖期には、約950組が産卵すると予測され、2020年12月に繁殖つがい数が4桁の1,000組に到達することは確実になりました。
 ▲新コロニーに着陸しようとする若い個体(2013年4月24日)
▲新コロニーに着陸しようとする若い個体(2013年4月24日)
 長谷川博
長谷川博
