第1回報告 アホウドリ繁殖状況

■テキスト&写真:長谷川博(OWS会長・東邦大学理学部)

2010年11月21日から12月11日に、伊豆諸島鳥島で第105回アホウドリ繁殖状況調査を行ないました。その結果を下表にまとめました。

【表】鳥島におけるアホウドリ集団の2010年12月期センサス結果

 
従来コロニーの西地区(2010年12月)。茂っている草は鳥 島に自生しているチガヤ。これらの株を移植して、営巣環境を改善した。   鳥島北西斜面の新コロニー(2010年12月)。2004-05 年繁殖期に確立して以来、急速に成長中。
 

1)繁殖つがい数とカウント数

鳥島集団の繁殖つがい数は全体で481組、うち燕崎斜面の従来コロニーでは396組、燕崎の崖上の平坦地に6組、北西斜面の新コロニーでは79組でした。

また、鳥島でカウントした個体数は、従来・新コロニーを合わせて7日間の平均で約771羽、最多793羽(昨年比+94羽)でした。そのうち、燕崎斜面の従来コロニーに着陸していた個体は平均約578羽、最多600羽(+47羽)で(この他に飛翔中の個体や海上に浮いている個体がいる)、北西斜面の新コロニーでは、平均約164羽、最多172羽(+46羽)でした。

この、繁殖つがい数とカウント数の順調な増加(それぞれ7.8%、14.2%)は、継続してきた営巣環境改善作業の結果、数年前から従来コロニーでの繁殖成功率が改善されて、そこから巣立ったひなの数が急増したためです(200羽を超えた。表2参照)。生存個体は2歳(産卵から数えて2年後)から鳥島に帰り始め、3歳になると約半数が鳥島に帰ってきます。これらの若鳥の多くが、混雑してきた従来コロニーを避けて、北西斜面の新コロニーに定着しているため、そこでの繁殖つがい数とカウント数が急増しているのです(それぞれ39%、40%増加)。

これを確認するために、体に黒褐色の羽毛を残しているおよそ10歳以下と推定される若い個体の割合を比較すると、従来コロニーの49%に対して、新コロニーでは86%でした。つまり、従来コロニーでは若鳥と成鳥の比はほぼ1:1なのに対し、新コロニーではその比が6:1なのです。

今後、これらの若い移住個体に加えて、新コロニーで生まれ育った若い個体がつぎつぎに繁殖を開始するので(平均して約7歳から)、新コロニーの繁殖つがい数は急増するはずです。来シーズンにはきっと約100組になるでしょう。

2)来シーズン以降の予想

鳥島のアホウドリ集団はきわめて順調に成長しています。来年5月、順調にゆけば(過去3年間と同様なら)、鳥島から約340〜350羽のひなが巣立つと期待され(2011年2月に小笠原諸島聟島に運ばれる15羽を除いて)、それらを含めたと鳥島集団の総個体数は約2,790羽になるでしょう。

さらに、来シーズン(2011-12年期)の鳥島全体の繁殖つがい数は505〜510組となり、350〜360羽が鳥島から巣立ち、総個体数は3000羽に達するでしょう。繁殖つがい数の増加が今シーズンの35組と較べ、25〜30組程度にとどまるのは、7年前の2004-05年期の巣立ちひな数が151羽と極端に少なく、来シーズンから繁殖を開始するつがいが少ないと予測されるからです。

その後の数年間は、平均して毎年40〜50組ずつ繁殖つがい数が増加し、5年後の2015-16年期には約700組のつがいが500羽ほどのひなを育て、さらに2020-21年期には約1000組のつがいが、およそ700羽のひなを育てると予想されます。そのころ、新コロニーで繁殖するつがい数はおよそ500組になるでしょう。


長谷川博
OWS会長
東邦大学名誉教授
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