海洋ゴミの誤食に関する調査

プラスチック等の「誤食」

コアホウドリは10月下旬から11月上旬の間にミッドウェーに飛来し、12月中旬までに一卵を産みます。ひなは1月下旬から2月上旬に孵化し、6月中旬から7月に巣立ちます。

巣立ちの後、5年間をミッドウェーの西から北西の海で過ごし、やがて島に戻って繁殖に備えます。 しかし、近年、巣立ち前に命を落とすひなが増え、遺体からは、ボトルのキャップ、ハブラシ、使い捨てライターなど大量のプラスチック製品やその破片が大量に見つかります。

アホウドリの仲間は、カツオドリなどのように潜って捕食することはできず、水面に浮いた状態で、水面に浮かんでくるイカや流藻などに産みつけられた魚卵などを主なエサとしています。そのため水面に浮いているゴミをエサと間違えてのみ込み、そのゴミが口移しでエサを与えられるひなの体内に蓄積されるというわけです。消化されないゴミはひなに疑似満腹感が与え、ひなはエサを求めなくなり、やがて脱水症状や栄養失調に陥り、死んでしまうのです。

ほかにも大きな異物が消化管を傷つけたり、ゴミに付着した化学物質などが影響を与えることも少なくないはずです。要するに親鳥のエサ捕食場所に大量のゴミが浮いているということがわかります。

では、こうしたゴミはどこから来るのでしょうか。

北太平洋に面した国々から流出したゴミは、海流や風の影響で太平洋をベルト状に滞留することが分かっています。
こうした海洋ゴミは、砕けて小さくなることはあっても分解されることなく半永久的に水面を漂い続けるのです。

死亡したコアホウドリヒナの胃内容物調査

FWSの協力を得て、死亡したコアホウドリビナ6体の胃内容物調査と3体の吐出物調査(ヒナが吐きもどしたペリット調査)を実施しました。調査資料や撮影データは、環境学習の教材で活用します。

誤食で運ばれた指標ゴミの回収・分類調査

コアホウドリとクロアシアホウドリの誤食によって運ばれたサンド島内に散乱している3種のゴミ(ボトルキャップ、使い捨てライター、カキ養殖用資材4種)の割合の調査を藤枝繁・鹿児島大学水産学部准教授が実施しました。調査データを以下に掲載します。

<実施者・データ提供:藤枝繁・鹿児島大学水産学部准教授>

調査方法

2011年6月9日,Sand Is.駐機場西側の1区画の道路一周に散乱しているプラスチックボトルキャップ,カキ養殖用パイプ(パイプ,損傷パイプ,まめ管,ワッシャー),ティスポーザブルライターの3種をすべて採取し,その比率を求めた。
調査範囲は区画外周道路(図1,赤線)の道路内側側面から外側及び内側1.5mの範囲(道路側面を歩き外側内側に一歩踏み込んで手を伸ばして取れる範囲)の幅3mとした。
外周道路の距離を1.1kmとすると,採取面積は約3,300m2となった。

 

結果

分類結果

項目
品目
個数
プラスチックキャップ
277
ペットボトルキャップ
154
その他キャップ
123
カキ養殖用パイプ類
157
パイプ
10
損傷パイプ
57
まめ管
78
ワッシャー
12
ディスポーザブルライター
35
35

 

まとめ

品目数の順位は,1位ペットボトルキャップ,2位その他のプラスチックキャップ,3位まめ管,4位損傷パイプ,5位ディスポーザブルライターとなった。

プラスチックキャップ:カキ養殖用パイプ類:ディスポーザブルライターの比率は8:4:1となった。

カキ養殖用パイプ類のうち,パイプ(長さ約20cm)と損傷パイプ(長さ約10cm)のものは,日本の広島湾で使用されているものであり,瀬戸内海西部の海岸と海面に多数漂着漂流していることから,豊後水道を経由して外洋に流出していることが伺える。

ディスポーザブルライターの散乱密度は,線密度で35本/1.1km=31.8本/kmであり,日本の海岸と遜色ない。

 

<藤枝繁・鹿児島大学水産学部准教授のデータより作図>

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