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フィールドノート
このコーナーでは、国内外、各地に在住しているOWSメンバーから、身近な海辺情報や自然環境に関するニュースなどをお届けします。
 
<< 2011年度 フィールドノート 寄稿者プロフィール>>
>>中村毅
「ジョイジョイ座間味」
代表
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>>浪崎直子
国立環境研究所
OWS研究員
(OWS正会員)
>>米沢良介
パラオ スプラッシュ
マネージャー
(OWS正会員)
>>コバヤシカヨ
読売新聞
(OWSサポーター)
>>杉森雄幸
海洋写真家
(OWSサポーター)
 
 
<<最新記事>>
 
 
サンゴのパラオ パラオより 山村 和 >>Profile
2008/09/22UP
 
 
 
 地図を開くと、日本から南にまっすぐ降りたところ、赤道より少し上あたりに、パラオ共和国という国があります。広い空の下、たくさんの緑の島々が青い海にちらばる、とても美しいところです。このパラオの魅力の源は?と聞かれたら、私ならまず一番に「サンゴ」を挙げるでしょう。海の中で生き物を育み景観に彩りを与え…と、パラオの海はサンゴなくしては語れません。しかしそれだけではないのです。実は、彼らは寿命が尽きた後に文字通りパラオを形作り、そこにすてきなおまけをつけてくれました。今回は、サンゴが作ったパラオと、水上の芸術をご紹介します。

 サンゴという生き物は、簡単に言うと石の家を持ったイソギンチャク。この石の家がどんどん積み重なって年月を経ると、圧縮されて岩になります。この岩が地殻変動などで海の上に顔を出すと、陸地の誕生です。もちろん最初はただの岩山ですが、そのうちに鳥が運んできた植物の種が芽吹き、立ち寄ったカニの糞が肥やしとなり…いつしか緑豊かな立派な島となるのです。「ロックアイランド」と呼ばれるパラオの島々そのものが、サンゴでできているんですね。
 陸地へと変化を遂げた、今は石灰岩という名前のついたかつてのサンゴたち、島になった後は風化して土を作るということがありません。雨に溶けやすいからです。この特質が、島をどんどん複雑な形に変えていきます。

 島に雨が降ると、表面はもちろんのこと、岩の内部にも浸透した雨水が島の中に裂け目や空洞を作っていくのですが、こうしてできた洞窟が、鍾乳洞。ときには外へつながり、海からカヤックなどで入ることができるようにもなります。洞窟と言えばそれだけでわくわくするものですが、水面からの洞窟は更に静かで神秘的です。ここに外から入る光の加減など条件が揃えば、写真の通り青の洞窟のできあがり!水と光とサンゴの共同作業の結果、水が本当に青くなるんですよ。
 また、島全体がバランスよく溶かされたり崩れたりすると、何かに似た形に見えることがあります。写真2は、まるで象が水につかっているように見えませんか?これはもちろん「象島」と呼ばれており、ボートでの移動の際に目を楽しませてくれます。この他にも、ウミガメのような形をした亀島、クジラのような鯨島などもあります。

 小さな小さな「サンゴ」という生き物が集まってできたパラオ、とても小さな国ですが、ここには雄大で繊細な自然があります。偶然のつながりが与えてくれる感動を、できるだけたくさんの方に味わっていただきたいと思ってガイドをしていますが、インターネットを通じて、それがみなさんにも伝わりますでしょうか?
 

 
地下水がもたらしたもの 沖縄県宮古島より 春川京子 >>Profile
2008/08/16UP
 
 
 
沖縄県宮古島は、沖縄本島の南西約290kmに位置するサンゴ礁に囲まれた島です。宮古島には川がありません。しかし島独自の地質と地形のおかげで、昔から人々は生活用水を得ることができました。
地表に降った雨は、通常10%ほどが地下に浸透しますが、宮古島は石灰岩層のため、約40%が地下水となります。
宮古島に降った雨は時間をかけて石灰岩層を通り、粘土質の岩の斜面を流れて海岸線の崖から湧き出たり、内陸部の自然洞窟から湧き出て、その湧水の近くに集落ができました。
現在は使われていない湧水がほとんどですが、そこには宮古島の不思議がつまっています。

琉球列島の辺りは地殻変動が激しく、これまで宮古島は120万〜13万年前ころ、完全に水没し、浅瀬のサンゴ礁であったと考えられていました。
宮古島には、猛毒の蛇、ハブがいないのですが、八重山や沖縄本島にいるのにどうして?という疑問に対して、一度完全に水没したため全滅したという説が一番有力でした。
ところが、湧水には、淡水性の魚、エビ、ガニなどが生息し、特に近年発見されたミヤコサワガニは、宮古島の固有亜種で、淡水で一生を終えるタイプです。
もし完全に水没していたらこのような淡水性の生き物がどうして生息するのでしょうか?
最近は、宮古島は完全に水没していなかったのでは、という説が有力になってきました。
小さい生き物が、生き証人となって宮古島の地史を教えてくれるのですね。

また、湧水が海にそそぐ浅瀬には、マングローブ林があります。マングローブは汽水域で育つことができるよう進化した植物の総称で、その林は、シオマネキやオサガニの仲間、ミナミトビハゼやオキナワアナジャコなど生き物の宝庫となっています。
宮古島の地質や地形は、人々の生活用水や、豊かな生態系を生んだのです。

しかし、その宮古島は、今問題を抱えています。
畑の化学肥料、生活排水、畜産廃棄物などで、地下水汚染が深刻になっているのです。
不法投棄も多く、まだ自分たちの土地を汚すことが自分たちの生活に大きく影響を及ぼすという認識があまりありません。
地下水汚染は、人の生活だけでなくマングローブや水辺の生きものの減少にもつながっています。ヒルギダマシは宮古島が北限ですが、既に姿を消してしまった場所もありますし、他のマングローブ林も以前より規模が小さくなってしまいました。
自然と触れ合うと、感動と共に、そのもろさ、をも感じます。貴重な自然を守ることは、自分たちの生活も守ることにつながり、それは1人ひとりの小さい気づきから始まるのだということを、自然体験やエコツアーから感じてもらえたら良いなと思っています。
 

 
サンドバイパス技術 オーストラリアより 釣田いずみ >>Profile
2008/07/22UP
 
 
 
 海辺の地形はいつも変化している。波や風で砂浜や岩場が侵食されたり、広がったり…。それが自然のあり方。そこを人の都合で操ろうとするから問題が出てくる。(クイーンズランド大学、デイビット・二−ル教授より) 
 オーストラリアのリゾート地ゴールドコーストの南端、丁度クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州の境目にツイードと言う名前の川があります。1900年、この川の河口両端に堤防が作られました。深く安全な航路を作るためです。ところが、半世紀もすると潮の流れと堤防の作用で、ツイード川の河口には砂が溜るようになってしまいました。その為、1960年には堤防の長さを伸ばす作業が行われました。しかし、砂の蓄積は続き、莫大な費用を使って定期的に砂を除去するしかなくなってしまったのです。更に、堤防は予想外の所で悪影響をもたらしました。ニューサウスウェールズ州の陸を拡大、クイーンズランド州には激しい海岸侵食をもたらしてしまったのです。事態は、ゴールドコースト市民の生活や観光客誘致に損害を出すほど深刻でした。

 そこで考え出されたのがサンドバイパス技術。ツイード川の河口、ニューサウスウェールズ州側に砂を吸い上げる機械を設置、吸い上げた砂を今度はクイーンズランド州の海岸に放流する装置です。この計画は1995年にあがり、2000年に始動しました。100年に及ぶツイード川の航路問題は、サンドバイパス技術によってようやく解決、両州の海岸も安定したのです。しかし、現在この施設は365日無休で稼動しています。電気の使用量が安い夜間に運転しているにもかかわらず、そのエネルギー消費量はゴールドコーストの商業施設で最大。船の航路と海岸を守るために、この施設は永遠に稼動しなくてはならないのです。

 海岸沿いは、とても魅力的な場所です。そのため、観光や住宅開発の格好の場。莫大な費用と時間をつぎ込むだけの価値があるとされいます。しかし、その代償にどれだけの生態系が崩されてきたのでしょうか。膨大なエネルギーを使って、砂を吸い上げ放流する一連の作業も、砂の中にすむ生物の身になって考えるとぞっとする話です。幾ら試行錯誤を繰り返しても、人間は自然の力に及ばない。人の都合でむやみに変えていくよりは、本来の海岸の姿を尊びその中から価値を見出すほうが懸命に思えてなりません。
 

 
帰ってきたハワイの鳥 ハワイ島より 杉下純市 >>Profile
2008/06/18UP
 
 
 
日本人にとって最も身近な海外ハワイ。ここハワイにはハワイミツスイと呼ばれる驚異の進化を遂げてきた固有の鳥が生息しています。休暇を利用してハワイを訪れる人は毎年跡を絶ちませんが、この鳥たちのことを耳にせずに帰ってしまう人がほとんどなのではないでしょうか。これは無理もない話で、彼ら、残念ながら”今はもう”人間の生活圏内には生息していなんです。ですからリゾートホテルなどの周りで出会う一見トロピカルな感じの鳥たちはみんな外来種なわけです。過去には島に暮らすハワイアンたちにとってとても身近な存在だったんですけれど。

さて、ハワイミツスイの驚異の進化のお話。およそ400万年前に北米大陸から偶然ハワイに辿り着いたたった1種のフィンチが、ハワイの多様な環境に適応してナント約50種までに進化していったのです!目を見張る進化の証はなんといっても彼らのくちばしの形。長く湾曲したものから太く短いくちばしまで、主とする食べものに応じて多種多様なくちばしを有するようになりました。このハワイミツスイ、200年ほど前までは50種近くが標高の高い山地から海岸線まで島々の至る所に生息していました。ですからこの時代の人々にとってはすごく身近な存在だったんですね。しかし、現在は約23種までに減少しています。種の絶滅、個体数の激減には多くの要因が複合的に関わっていて、主としては白人がもたらしたマラリア蚊、農地開発による生息地の消失、移入哺乳動物、外来の捕食動物・競争種などが理由として挙げられています。いずれも人為的なものです。

私の暮らすハワイ島には7種のハワイミツスイが現存していますが、どの種もマラリア蚊の生息圏外である標高の高い場所に生息してます。住民でもこの鳥たちのことを知らない人がたくさんいるくらいで、もう以前のような身近な存在ではなくなってしまいました。しかし近年、驚くべきことに、そして嬉しいことにハワイアマキヒ(写真下)という種がかつて生息地であり人間も暮らす低地に戻ってきました。これまでの研究で彼らが極めて致死性の高い鳥マラリアに対し抗体を発達させていることがわかっています。世界的に見てもほとんど前例のない出来事なんです。野生の生きものの強い生命力、卓越した適応力を感じますね。しかしなんとも皮肉なことで、アマキヒが戻ってきた低地の森林は現在ハワイ島で最も宅地開発が盛んな地域…。森は次々と切り開かれています。奇跡的なカムバックを遂げた島の小さな一員は、再び人間の手によって脅威に晒されています。過去の過ちから学び、再び同じ轍を踏むようなことがあってはいけません。人間は本当に賢さを備えた生きものなのか、我々は試されています。
 

 
それぞれのアザラシ 北海道より 倉沢栄一 >>Profile
2008/05/17UP
 
 
 
春はアザラシにとって出産の季節。3月終わりから4月頭にかけては、オホーツク海の氷上でゴマフアザラシやクラカケアザラシ、そして約1ヶ月遅れて、道東沿岸の岩場に生息するゼニガタアザラシが子どもを産み育てます。今年は3年ぶりに、知床半島と国後島に挟まれた根室海峡に、まともに流氷がやってきたこともあり、氷上繁殖タイプのアザラシの子育ての様子をじっくりと撮影することができました。上の画像は、クラカケアザラシの赤ちゃんが、僕の構えるビデオカメラをのぞきにきたところ。おそらく生後数日から1週間ほどしか経っていないと思われますが、泳ぎはかなり達者です。地球温暖化の影響でしょうか、年々、流氷の規模が小さくなる傾向が見られます。アザラシのゆりかごに、危険信号が点滅しはじめたようです。さて、2枚目の画像は、昨日、襟裳岬で撮影したゼニガタアザラシの親子。まさに、今、出産のピークで、そこここに愛らしい親子の姿が見られます。ここではアザラシの数がゆるやかに増え続け、最大頭数約550頭。20年前と比べて、実に1.8倍です。とはいえ、頭数の増加は手放しでは喜べません。地元漁師が営むサケ定置網に入り込み、漁業被害をもたらしているからです。北海道のアザラシたちから、ますます目が離せません。
 

 
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